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多言語デスクトップパブリッシング (DTP) のプロセス
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多言語デスクトップパブリッシング (DTP) のプロセス

言語ローカライゼーションの業界では、文体/トーン、微妙な文化の違い、宗教的見解、政治的感覚などの重要性をよく耳にします。ローカライゼーション作業を行ったことがある人なら、このことをご存じでしょう。一方で見落とされがちなのが、翻訳後のデザインやレイアウト (DTP) の重要性です。

 

DTPとは簡単に言えば、コンテンツのデザインやレイアウトのことです。コンテンツにはアンケート、プレゼンテーション、製品パッケージなどさまざまなものがあります。

 

多言語DTPとは、訳文を原文のデザインに合わせることを指します。原文のデザインは、あくまでもその言語の市場を対象としたものであるため、ローカライゼーションではさらに多くのステップが必要になります。DTPスペシャリストならだれでも多言語DTPを扱えるわけではありません。なぜなら、多言語DTPは単に文章を置き換えるだけの作業ではないからです。ターゲット言語、その文字やルールを理解した経験豊富なDTPスペシャリストでなければ、的確にこなすことはできません。文字が原文の文字とまったく違う場合はさらに複雑な作業になります。例えば、原文が英語 (ローマ字書体、半角) で、訳文が日本語 (日本語書体、全角) の場合、レイアウトは最終的に少し異なるものになり、デザインのガイドラインに沿ったものにはならない可能性があります。これは、訳文と原文の長さに最高30%の差が生まれる可能性があり、さらに一部の言語では行や文字の間隔が大きく異なるものもあるためです。そのため、DTPスペシャリストには、状況に合わせてデザインを応用できるクリエイティブな柔軟性が求められます。この例はあくまでも多言語DTPの違いを示すものであるため、アジア言語のDTPにはまた別の難しさがあります。

多言語 DTP のプロセス

1. プロジェクト開始前

まずDTPスペシャリストが原文ファイルを受け取ると、デザインに潜在的な問題がないかを確認し、問題があればプロジェクト開始前にクライアントに伝えます。

 

2. 下準備

専用ツールを使ってDTPで原文を処理し、翻訳作業のための下準備を整えます。

 

3. 翻訳

翻訳メモリー、専門用語ベース、スタイルガイドなど、翻訳の質と統一性を高めるための専用ツールや支援ツールを使って、翻訳者が翻訳を行います。

「この時点でなぜツールを使う必要があるのか」、「直接訳文を打ち込んだり、Wordで作成したりすれば済むのではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。もちろんそれも可能ですが、この段階でツールを使うことにはもっともな理由があります。

第一に、翻訳者はあくまでも語学のプロであり、必ずしもDTPのスキルを持ち合わせているとは限りません。そのため、翻訳者は訳文に合わせてレイアウトを編集できない可能性があります。

第二に、原文ファイルに直接訳文を打ち込むと、過去の翻訳や重複している内容を使って統一性を図ることができる翻訳メモリーのメリットを生かせなくなります。200ページ分の文章を翻訳して、製品用語が統一されているかどうかを手作業でチェックしなければならないとしたらどうでしょう?作業スピードが落ちることは明らかで、翻訳に誤りがあれば読み手を混乱させてしまうことになります。

 

4. 編集者によるチェック

翻訳者以外の言語専門スタッフが訳文をチェックして、すべてが正確に訳されているか、文法的な誤りや誤字脱字がないかを確認します。

 

5. 訳文の取り込み

訳文を原文のファイル形式に取り込んで原文と置き換えます。

 

6. 最終デザイン

DTPスペシャリストが、原文ファイルと同じデザインツールを使って新しいレイアウトの作成に取り掛かります。多言語DTPにおける課題で触れた通り、訳文に合わせてレイアウトを調整するこの段階で、DTPスペシャリストの語学知識とクリエイティブな柔軟性が発揮されます。

 

7. 言語品質保証 (QA)

次に三人目の言語専門スタッフが、すべてが正確に訳され、配置されているかを確認するために最終チェックを行います。この作業は、文字や文章を二行にまたがって分けずに、つなげて表示させる必要のある言語では特に重要になります。併せて自動チェックを行い、誤字脱字がないか、用語は統一されているか、細かいチェックを行います。

 

8. デザイン品質保証 (QA)

最後にDTPスペシャリストが、訳文が可能な限り原文と一致したものになっているか、原文に照らし合わせて1ページずつレイアウトをチェックします。

 

9. 納品

翻訳完成品が納品されると、クライアントが翻訳の内容とレイアウトを確認します。この段階でクライアントのニーズに合わせて微調整を行い、最終版が完成します。

 

このように、すべてのプロセスが完了するまでには長い道のりを要します。すべてを管理するプロジェクトマネージャーがいるのは、そのためです。

 

翻訳を外注するご予定がありましたら、ぜひDTPも同じ会社に依頼することをご検討ください。そうすれば、その会社はすでに御社の要望を理解しており、語学に関する専門知識も持ち合わせているため、さらにレベルの高い品質保証が可能になるからです。DTP作業を翻訳とは別の会社に依頼すれば、DTPスペシャリストを探して、テストして、内容を説明しなければならないため、一社に統一した方が時間と労力の節約につながります。DTPは二次的なサービスと思われがちですが、ローカライゼーションにおいて非常に重要な役割を果たす作業なのです。